真鶴半島は神奈川県南部、湯河原の手前にあるマイナー観光地です。この地域ではどうしても箱根、湯河原、熱海の影に隠れてしまい、昭和から平成にかけてみるみる廃れて行きました。

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 真鶴には三ツ石という景勝地と新鮮な海の幸、それに温泉もあるのですが、宿泊施設はその数を減らし現在では漁師宿が数軒。そのため日帰り入浴をやっている所など一軒も無いのが現状で、宿泊しなければ真鶴の温泉には入れません。

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 三ツ石の入り口にあるお土産屋の近くで海を眺めている猫。意外にもここ三ツ石を訪れる観光客は、平日にも関わらず多く居ました。ただしその全てが高齢者で、若者は居ませんでした。真鶴半島は県立公園として守られているため、見事な原生林が広がっており、遊歩道の散策などには良いかもしれません。実際私が歩いている時、藪の中でガサガサ音がすると思ったら、野生の狸と出くわしました。

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 今回、真鶴半島を訪れた目的は、旧真鶴水族館跡を訪れる事にありました。入り口には内袋観音参道と書かれた石碑が建てられていながらも、その分かれ道は大きな岩で遮られ、立ち入り禁止になっています。

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 崖の上を走る道路から海岸のある入江へと降りて行く道は、落石や倒木のために廃道となっています。それでもこの道は現在、釣り人がよく使っているそうですが、行かれる方は自己責任でお願いします。

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 雑草生い茂る急な坂道を下っていくと、やがて海が見えて来ました。

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 この真鶴水族館は1955年に開業し、1979年頃に閉館されたとされています。しかし廃墟としては、かつて竜宮城を模した廃墟が残っていたそうですが、2005年頃には解体されてしまい、廃墟マニアすら訪れなくなってしまった場所です。不自然に一本だけ残るソテツだけが当時の面影を残しています。

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 藪の中にゲートのようなコンクリート構造物が確認出来ます。こっちが入り口だったのでしょうか。

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 実は私自身、小学校低学年の頃に父親に連れられて、この水族館を訪れた事があります。恐らくは70年代半ばと思いますが、微かな記憶しかありません。

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 水槽の半分ぐらいが空で、館内では従業員がホースで水を撒いており、展示されている魚もアジやサメ、サザエなどその辺にいる魚介類ばかり。小学生にして、この水族館終わってると思わしめるほどのダメっぷりでした。

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 釣り堀だった生け簀の跡。入江の奥は堤防で区切られています。

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 この水族館が閉館されたのは来訪者の減少もさることながら、台風による高波により施設の屋根が崩れた事が原因とされています。外海に面した堤防は度重なる高波で、すでに崩壊していました。

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 付近の磯は、絶好の釣りポイントだそうです。この日も崖上の廃道入り口には二台の乗用車が停まっていました。

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 跡地の大半には海水が入り込んでいます。しかしよく見れば、奥に洞穴のような物が。

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 藪に踏み入り、奥へと進んで行きました。

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 そこに姿を現したのが、この観音様。入り江へと降りる道の入り口にあった石碑の、内袋観音とはこの事でした。

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 お供え物がある事から、今でも地元のどなたかが管理されてるのかと思われます。しかし元々水族館しかなかった小さな入り江。倒木や落石で道も塞がれてしまった現在、訪れる人も居なくなってしまった事でしょう。

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 よく見れば、元々は櫓が建っていたような形跡もあります。この観音像は昔、漁師の方が漁の安全を祈願し彫られたという話があります。また、古い地図には卍マークも記載されているとか。子供の頃に訪れた時、観音堂があったかなどの記憶は無いのですが、恐らく興味が無かったため覚えて無いだけかと思われます。
 すでに人がお参りする事も無くなってしまった観音像ですが、今後も地元の方が管理され続けられる事を願うばかりです。もしかしたら今でもこの観音様は、釣り人たちの安全を見守ってられるのかも知れません。