寄国土(ゆするど)トンネルの入り口、つまりダム側の脇にも山あいに登ってゆく道があります。そのつづら折の急な坂道を登ってゆくと日向集落に出ます。

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 湖畔を見下ろす7世帯ほどの小さな集落はほぼ人が住んでおり、近くには斜面を開墾した畑も広がっています。家は古民家がほとんどで、険しい土地にへばり付くように建つ奥秩父特有の農村風景が残っています。

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 集落の一番奥には集会所の建つ広場がありますが、ここには近年まで廃校となった浦山小学校の木造校舎跡が残っていたそうです。その広場左手の脇道が、嶽集落へと続く道です。

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 この登山道のような山道は『うわごう道』と呼ばれる、日向、嶽、巣郷、有坂、茶平、武士平、大神楽などの山間集落を結ぶ生活道でした。しかし現在、日向以外の集落は全て廃村となり、この道もほとんど使われなくなってしまいました。生活道とはいえ見ての通り車も通れない道です。しかし、もしかしたらかつて各集落から日向集落にあった浦山小学校まで、子供たちがこの道を通っていたのかも知れません。

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 高台に一軒の廃屋。しかしロープが張られ立ち入り禁止となっています。

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 実はこの手前の開けた場所には廃屋が残っていたのですが2013年8月、放火により2棟の廃屋が全焼してしまったとか。ちなみに放火犯の26歳男性はすぐ逮捕されたそうです。

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 焼け残った風呂と厠。この嶽集落は2003年秋に発売されたPS2用ホラーゲーム『サイレン』の舞台のモデルとなり、その事から多くの人に知られ訪れる人も増えて行ったそうです。地元の方々にとっては迷惑な話かもしれません。

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 ちょっと気になる立て札がお地蔵さんが並んでいる所に立てられていました。盗まれたのか、お地蔵さんが一体消えてしまったそうです。火事が起きたのはそのバチが当たったのではという。

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 高台の廃屋の他、道沿いには二軒の廃屋が現存しております。しかし二軒とも建てられた時代がかなり古い事と、廃屋となってから相当な年月が過ぎている事などから、すでに半壊しております。

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 こちらの蔵もいつ倒壊するか分かりません。

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 左手奥の家屋はすでに全壊。

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 嶽集落の奥には十二社神社というお社が有ります。

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 社の奥には猿の親子がこちらの様子を伺っていました。

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 嶽集落は日向集落から十分もかからない近さに有るので、恐らくは日向に住む方が綺麗に管理されているのかと思われます。

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 今回訪れた茶平と嶽以外にも、先に述べた通り『うわごう道』沿いには多くの廃村が有ります。またそれ以外にもダムの対岸には若獅子、浦山川沿いに栗山、山掴、更に上流域には細久保や冠岩など数多くの廃村が存在します。この地域には必ず再び訪れようと思いました。
 たまたま多くの廃屋が解体されずに残されていたため、この地域の廃村群が幾多の廃墟サイトで紹介されているのかもしれませんが、奥秩父に限らず全国にはまだまだネット上でも知られていない廃村が多く存在し、同時に過疎化に伴い増え続けている事と思われます。


埼玉県秩父市浦山地区(1)、ダム湖と限界集落
埼玉県秩父市浦山地区(2)、廃村、茶平集落
埼玉県秩父市浦山地区(4)、廃村、栗山集落(前編)
埼玉県秩父市浦山地区(5)、廃村、栗山集落(後編)
埼玉県秩父市浦山地区(6)、廃村、山掴集落
埼玉県秩父市浦山地区(7)、浦山中学校跡と川俣小学校跡